こすもす便り(抜粋) |
こすもす便り28号 2018年(平成30年)4月27日 |
みなさまには回収にご協力いただきありがとうございました。該当箇所を削除し、改めて再度発行をいたします。よろしくご配慮のほどをお願いいたします。
「精神科医療の新しい方向を考える講演会」 |
天気にも恵まれオリンピックの中継ともぶつかりましたが、たくさんの方々の来場を頂き、成功裏に終えることができスタッフ一同胸をなでおろしたところです。
内容は、ACTの基本的な説明(宮崎DR)45分、実際の支援内容の説明(香取L)45分、質問タイム(パネルディスカッション)40分と長時間でしたが、関心の高い方が集まり、終始会場は熱気に包まれていました。
ACTの基本的な説明(宮崎DR)
診察室に掲げられているウイリアム・オスラー先生の説明から始まりました。近代医学の父が女の子のところに往診している姿です。目線を同じ高さにして穏やかに接しています。
ACT実践の原則は、「ACTは、支援をお届けするプログラムである。」困っている人ほど病院に行けないのです。医療をお届けに行くのです。1970年代にアメリカから始まりました。「患者さんを管理するプログラムではない。」
入院させて、注射をしたり、隔離したりするのではないのです。「ACTの第一の目標は、リカバリーである。」「リカバリーのために、地域のなかで、治療とリハビリテーションを行っていく。」です。リカバリーとは「生き生きと生きる」です。ゲーテが理想としていたものです。
その特徴として
* チームで関わる。支え合い、励まし合いながらやっていく。
* 「そのとき、その場で」支援を行う。
タイムリーに具体的に生活の場で必要なことは何でもやります。
* 担当する患者さんは、少なめにおさえる。
50人と決めています。100人と増やすとその質がガクンと落ちます。
* 支援の期間を限定しない。
* 患者さんをスタッフ全員で共有する。
* 支援を柔軟に提供する。
* チームが責任を持つ。
* 24時間365日で、危機に対応する。
たいへんだと言われるが、実際には態勢を取っているが、実際に出動するのは1年間に1,2度有るかないかです。きちんと体制を取って日中に訪問支援をすることが大切なのです。アクトは重症な状態が長く続いている人のためのプログラムです。多くは統合失調症です。躁うつ病とか重症のうつとか強迫神経症の方とか外に出られない方を対象にしています。
原則に忠実なプログラムであればあるほど、よい結果がでるということが、証明されています。アメリカの70年代に始まっていますから40年のデータの積み重ねがあります。
チームのそれぞれに強みがありますので、それを活かしていこうと言うことになります。
支援は必要な場所で行う
自宅ですとかご近所さんにこちらから出向いて行って、支援を行います。形式的に月一回訪問すると言うことではなく、必要ならいろんなスタッフが訪問します。一日に何回でも必要なら行くのです。365日です。いつでもどこでも患者さんを支えます。
特定な人だけしかその人のことを分かっていませんとなると、担当が変わると困るわけです。なるべくチームとしてスタッフがそれぞれ分かっているということになります。
落ち着いてくると回数も減ってきます。必要な時に必要な支援を行うのですが、ご本人がしばしば拒否することもあります。それで支援をスパッと切ることはありません。「帰れ」と何回も言われたこともあります。患者さんのニーズに合わせて、支援の計画を立てて随時見直していきます。日本人は苦手なような気もしますが、随時、計画は変えることがあります。
日常生活のいろいろな支援や住居を探したり、お仕事を探したり、適宜ご家族への支援と言うのも検討して行っていきます。年金の申請とか、お金に関する相談に応じて支援するというのもあります。
健康管理、薬物管理、ギャンブル依存、競輪競馬パチンコなどにも対応します。非常勤ですがカウンセラーの先生も来ていますので、カウンセリングをやっていただくこともあります。
アクトは重症で、地域で生活するのが難しい方が対象ということになります。精神科の隔離病棟の慢性期で10年20年いるようなイメージの患者さんです。いろんな方がいます。「本当に退院させるんですか」というような患者さんも地域にはいらっしゃるので、そういう方が対象ということになります。
依存症の方とか就労支援の方は日本のアクトは弱くて、この整備は今後の課題です。
アクトのスタッフとしてはピアスペシャリストという方が所属しています。患者さんがスタッフに加わると言うことは、より良いと言われています。
リカバリーは過程であり、生き方であり、構えであり、日々の挑戦の仕方です。いつも真っすぐに上手くいくような過程ではありません。時には不安定となり、つまずき、止まってしまうのですが、気を取り直してもう一度始めることはできるのです。
必要としているのは、障害への挑戦を体験することであり、障害の制限の中、あるいはそれを超えて、健全さと自らの意思によって行動するという新しく貴重な感覚を自分の中に再び呼び起こすことなのです。私たちが求めるのは、地域の中で暮らし、働き、愛し、そこで自分が重要な貢献をすることです。
ACTの実際の支援の説明(香取TR)
こすもす会との関係は深澤さん滝さんとは、昨年の1月に東京で「ACT全国研修会」やACT関東チームのメーリングリストでACTの基本的な説明(宮崎DR)交流が始まりました。そして、今日この日に開催出来て良かったなと思います。
アクトエールは鎌ヶ谷市、エールと言うのはフランス語で「翼」つばさクリニックと関連しています。先生はガンダムが好きでそこからも来ています。鎌ヶ谷市の秋元病院に勤めていた私と先生と看護士2人と計4人で立ち上げました。ACT;包括的地域生活支援プログラムと日本語ではなります。さまざまな職種で構成された多職種チームによる密度の濃い支援を、地域社会のなかに訪問(アウトリーチ)することで行う集中型・包括型プログラムです。
日本では2003年から市川市で、ACT−Jが立ち上がって、2004年京都の方でACT−Kというのが立ち上がり、それからACT−ゼロが岡山で立ち上がりました。ここは行政が主体となりました。いろいろなチームがあり、私たちは精神科クリニックがやっています。訪問看護ステーションがやっているチームもあります。愛知も盛んにやっておりまして、行政がアクトチームを作りたいと一所懸命に動いて立ち上げています。埼玉の方は家族会もくせい会がメーンになって立ち上がったのです。
日本は精神科病院大国と言われてます。今は300くらい元450くらいあったんですけど、だいぶ減っては来ています。本当に入院が長いのです。ACTができれば入院は減少していくと思うのですけど、10万人に一つ必要だと言われ、日本には1200か所必要です。千葉県は3か所あり、全国では25か所くらいです。
訪問は一人が10人までとなっていて医療・福祉・就労など全部が提供されています。重度の方はスピードとかパワーが必要です。よくなって来たら地域の福祉につなげます。
ACTは、積極的に訪問を行うことにより、利用者が必要とする場所で、必要とする状況においてサービス提供が行われます。すなわち、自宅や職場、行きつけの喫茶店など利用者の生活の場においてサービス提供を行います。
アクトエールは、医師1名薬剤師1名看護師2名でスタートしました。現在は精神保健福祉士や作業療法士も加わり9名のスタッフで運営。訪問エリアは鎌ケ谷を中心とした近隣の市を訪問範囲としています。
リカバリーは過程であり、生き方であり、構えであり、日々の挑戦の仕方です。いつもまっすぐにうまくいくような過程ではありません。時には不安定となり、つまずき、止まってしまうのですが、気を取り直してもう一度始めることはできるのです。
必要としているのは、障害への挑戦を体験することであり、障害の制限の中、あるいはそれを超えて、健全さと自らの意思によって行動するという新しく貴重な感覚を自分の中に再び呼び起こすことなのです。私たちが求めるのは、地域の中で暮らし、働き、愛し、そこで自分が重要な貢献をすることです。
ストレングスモデルの原則
*クライエント(サービスや援助を受ける利用者)こそが支援関係の監督者である
* 関係性が根本であり、本質である
* 支援者の仕事の主要な場所は地域である
* 地域を資源のオアシスとしてとらえる
フィデリティー調査(ACTチームの質を担保するものでACTの質をモニタリングする尺度)と言うのがあり、フィデリティーとは実施度を測るもので、ACTプログラムの実施の適切さを評価するために開発されたものです。組織としての8項目+フィデリティ53項目について各項目5段階尺度で評価するもです。
年1会ACTネットワークから各チームに派遣、評価。ACT全国研修会にて公表されます。
ACT全国ネットワークがあります。
目的日本における世界基準のACTを実践することを通じ、その普及、定着、質の向上、制度化に務めます。
事業 1 研修事業の実施 2 わが国にふさわしいACT標準版の提示、フィデリティ尺度の開発 3 ACTチームの質の向上のためのモニタリング実施 4 ACTおよび地域生活中心の精神保健医療福祉システムづくりに関する研究・情報交換
・プラネタリウム、映画、カラオケ、新年会、誕生会、海にドライブ、岩盤浴やスーパー銭湯、プールへの同行、コンサートの送迎
・外食の同行(焼肉・ファミレス・ファーストフード・寿司・カフェ・もんじゃ焼きなど)
・季節行事:バレンタイン、お花見、クリスマス、新年会
・散髪や髪の染色、髭剃り・恋愛相談、性の相談 などがあります。
・訪問診療 ・他科受診の同行 ・薬の配達
・薬剤指導 ・服薬カレンダーの設置
・軟膏の塗布や熱傷の処置 ・夜間・休日の緊急訪問診療 ・急救搬送時の同行・入院時の同行、・入院中の面会
8時35分から朝ミーティングをしています。ミーティングが必要な利用者の名前を、前日までにホワイトボードに記入しておきます。ストレングス・アセスメントモデルというのがあり、一人の利用者さんに一枚ずつ作ります。これをもとにスーパービジョン(指導者(スーパーバイザー)から教育を受ける過程)をやります。すごく困難な事例とか困った状況とか急性期の方の対応を話し合ったりします。
質疑応答 シンポジウム
香取;費用の件の質問がたくさんあります。自立支援医療で上限があり、1割負担です。時間が長くなると高くなります。月二回で3000円くらいです。訪問看護は一回480円くらいです。週3回で上限くらいになります。
Q薬物治療をどのように考えていますか?
宮崎;薬物療法はとても大事だと考えています。お薬だけで何もかも何とかしようとすると、たいへんです。多剤大量といって寝ることや落ち着きたいというのを薬でカバーしようとすると大量になってしまいます。薬なしで何とかしようとするのも無謀なことです。どうするかと言うと、退院の時はたくさん飲んでいても支援を続けていると自然に使う薬の量が減っていきます。具合がよくなっていくと「眠くてしょうがないから薬を減らしてください」と言うようになります。もう一つは持効性注射剤を打つと1か月効いていますから使います。
在宅ではなかなか自分で管理できないので飲み忘れ安いので、注射剤を使うことで具合が安定することがあります。薬物に対する工夫は重視しています。
香取;ACTでは3大禁句と言って服薬・入院・治療は言わないようにしています。最初に関係を作ることが大事なのです。病院ですごく嫌な思いをして、人に会うのも嫌だし、コミュニケーションも取りにくいなど、とにかく人間関係を作れません。地域に住む人として関係を築くことが必要です。信頼してもらって薬はどこまで効くと話します。なぜ飲まないかと聞きます。言い辛いことも出てきます。朝起きれないからとかだったら、こうしてみようとか相談を受けて、話していきます。地域で生活できることが基本です。
Q 本人の病識がない状態で引きこもっているのをどうやって病院につなげるのか?
宮崎;スタッフは家族ではない第3者・他人さんとしての強みがあります。外の風としてお家に入らせていただくと何となく話し合いができます。専門家であるよりも他人様としての強みとして効果があるのです。
香取;家族と話していてもう一歩というところまで良くなっているんだけどスタッフが入ると風穴があくように勇気をもって環境を変えてもらえたらいいなと思います。特に病識がないとか医療につなげないどうしたらいいんだろうという時に、本人が了解しなくてもご家族の希望で会いに行きます。引きこもっていてお母さんが困っている話をします。
QACTを実施する先生が増えないのはなぜ?
宮崎;既存の外来で手一杯でそこまで広げられない、24時間対応はとてもじゃないけどできない、などそんなことはないと言っているんですが・・・そこまで踏み切れないのです。医師と看護師などのパートナーがいて地域の家族会等の出会いが運命的にあるといいのです。
☆ 編 集 後 記 ☆ |
アクト・エールの方々には、遠い市原の地まで足を運んでいただき、たいへん熱い思いを語っていただきました。みなさん市原の地にもぜひアクトが欲しいと、お思いのことと推察されます。新しいことには二の足を踏む方が多い中、勇気を奮ってアクトを立ち上げ、実践に移していることは、本当に頭が下がります。私たち家族会も何とか足元に及ばないかもしれませんが、何とかこの市原の地にアクトの一つでも欲しいものです。この企画をさらに進めるべく、無い知恵を絞って一歩でも前進できればと奮闘努力を重ねたいと思います。また、みなさんのご協力を仰ぎつつ、スタッフ一同企画を立案し、活動していきたいと考えております。一人でも多くの方に、賛同いただき、家族会の活動に参加し、より活発になっていけばいいなと様々な企画を考えております。障害のある人もない人もその人らしい人生を全うできるように、少しでも生活の質がより充実したものになるように、親としてできることはしていきたいものです。
以前開催しました親亡き後の講演会も好評でしたが、今現在親あるうちに何ができるか、何を残していけるかも考えておかなければなりません。私も含めてみなさんも歳を重ね、体力の衰えを感じますが、一日でも長生きしてわが子の傍にいてあげたいという気持ちを実現するためには、健康で長生き健康長寿でなければなりません。最近テレビ等の番組では、老化を防ぐとか、病気の予防とか様々に報道されています。それを見ていると、精神的な病の病後のリハビリと共通点が見いだされます。
生活習慣の重要さを常に強調されているように感じます。朝昼晩の食事や早寝早起きと言った生活習慣です。さらに、毎日の運動や文化的な活動の大切さも強調されています。よく運動療法とか音楽療法と言う言葉を耳にします。これは、老人や病気の人に限らず生きている人みんなに言えることなのです。朝10分の音読という方もいました。カラオケ等で歌を歌い、声を出すなど、文化的な活動も大事だそうです。
趣味のある人ない人、タバコを吸う人吸わない人、運動をする人しない人、食事に気を付けている人いない人など、比べればどちらに属していた方が健康長寿を全うできるのか一目瞭然です。こすもす会でもみなさんとお互いに健康増進のために何をしているか紹介し合うなど、病気の話ばかりではない家族会の場も必要でしょう。私の家のマイブームとしては、ラジオ体操と音楽活動です。歌や楽器は呼吸法にもなりますし、脳の活性化にもなるそうです。若いころ歌った歌を思い出し、歌うことが脳細胞を生き生きとさせるそうです。(文責・深澤)
市原市精神障害者家族会(こすもす会) 〒290-0054市原市五井中央東2-27-2 大野ビル1F こすもす工房内 TEL/FAX0436-25-5258 |